「依頼された原稿料をクライアントが支払ってくれない」というシンプルな未払いには「支払督促」が有効です。
簡易裁判所で申し立てが認められると、相手側に支払督促の通知が送付され、2週間以内に返答がなければ「仮執行申立書」を提出して、相手の財産を差し押さえることができます。
支払督促は裁判所への出廷の必要がなく、書類審査のみで行うためスピーディな未払い回収を求めている人に最適です。
私が申請したのは、平成31年(2019年)9月、東京簡易裁判所です。書式や申立手数料も変わってくるので、ご注意ください。
支払督促の対象になるもの
貸金、立替金 / 売買代金 / 給料、報酬 / 請負代金、修理代金 /
家賃、地代 / 敷金、保証金
未払いの条件として、申し立てできるものは上記のようなものです。フリーランスの場合、原稿料は「報酬」にあたります。
支払督促のメリット&デメリット
とくに、回収できる資産については大事なポイントです。
判決後、勝訴しても預金口座に資金が入っていないような場合は、回収できません。デメリットの要素が高い場合は、一度弁護士の無料相談を利用してみるといいでしょう。
支払督促の作成方法
支払督促を管轄するのは、各地方の裁判所です。相手が在住する簡易裁判所に提出する必要があります。まずは、所在地を確認し、提出する裁判所を確認してください。
支払督促申立書をダウンロードする
次に支払督促申立書をダウンロードしましょう。
「支払督促申立書」「当事者目録」「請求の趣旨及び原因」の3枚が1セットになっています。
支払督促申立書の書き方
まずは、1枚目の「支払督促申立書」の記載方法について説明します。
請求事件名
簡潔にわかりやすく「原稿料未払い」とします。決まりはありません。「編集費用未払い」「制作物未払い」など、わかりやすければ問題ありません。
申立て手続き費用
申立手続き費用は、未払いの回収額に応じて変わります。
金額10万円で500円の費用がかかるのが通例です(「手数料一覧」)。そのほか、郵便ハガキ1枚 63円、資格証明書1通が必要になります。
相手の所在がある管轄の裁判所に問い合わせましょう。相手の所在地は、登記簿で確認できます。
登記簿(資格証明書)は支払督促の際に必要な書類なので、法務省のホームページか近くの法務局から取り寄せましょう。
当事者目録
次に2枚目の「当事者目録」について説明します。
ここで記載するのは、債務者である自分の情報と債権者であるクライアントの情報です。
債務者→自分の住所・氏名・連絡先を記載
書類の送付先をチェックします。記載の場所と違うところへ送付してほしい場合は、送達場所の届出に別途記載します。
債権者情報→相手の住所・氏名(代表取締役)・連絡先を記載
登記簿や住民票と違う場合は、現住所を記載します。
請求の趣旨及び原因
次に、3枚目の「請求の趣旨及び原因」の記載方法について説明します。
請求の趣旨
「請求の趣旨」のところは、
1 金 000,000円と未払い金額を記入します。
2 上記金額にチェックを入れます。
3 金 0000円(申し立て費用)→これは、1枚目と同様申し立てにかかる費用を記載します。裁判所に問い合わせる必要があるため、わからない場合はなにも書かなくても大丈夫です。
請求の原因
ここでは、未払いとなった契約内容を下記のように記載します。
【1】雑誌●●●原稿料未払い内容
(ア)発売日/雑誌●●● 令和●年●月●日発売号
(イ)契約者/株式会社●●●● 代表取締役 ●●●●
(ウ)原稿料/000,000円
(エ)支払日/令和●年●月●日
何号かたまって未払いがある場合は、【2】雑誌●●●原稿料未払い内容として、(ア)~(エ)の項目内容を変更して、まとめて請求します。経費の精算がある場合も同様です。
最後に
未払い金額合計000,000円
と記載。
上記は業務委託契約(原稿料には経費も含む)。【1】の契約は令和●年●月●日、【2】令和●年●月●日
と記載。業務委託契約書がない場合でも、依頼されたメールを確認してください。そのほか、台割り・進行表などの確認を。
雑誌やWebなどで原稿がすでに掲載されている場合、支払督促は非常に有効です。
契約書があれば別ですが、書籍で制作途中の企画打ち切り、原稿の回収拒否などは、相手側が異議を申し立てる可能せてもあるため、支払督促ではなく、簡易裁判・民事調停・直接交渉が望ましいです。
支払督促に必要な書類
支払督促申立書
記載後は、「支払督促申立書」「当事者目録」「請求の趣旨及び原因」のコピーをとって、3枚をまとめて左側2箇所をステプラー(ホッチキス)でとめて1セットにします。これを2部作ります。
1枚目に押印を忘れずに。
各ページの上部余白に捨印を押印しておくと、電話のやりとりだけで訂正ができるのでおすすめです。
- 申立書のダウンロード→「支払督促申立書」
資格証明書
相手が法人の場合は、代表者事項証明書や履歴事項全部証明書などが記載されている書類を取り寄せます。これは、商業登記簿謄本(法人の全部事項証明書)といい、法務局で取り扱っています。
近くの法務局か登記ねっとに登録して取り寄せることができます。1枚500~600円の手数料がかかります。
- 登記オンライン申請から登記簿を取得(新規登録必要)
- 法人の場合は「商業・法人」を選択
郵便はがき
郵便はがきは、債務者1名につき1枚必要です。
宛名側に自分の住所・氏名(法人の場合は、法人名と代表者名。送達場所や送達受取人の届出をしたときはその届出場所)を記載します。
債務者に支払督促が送達できたら、このように裏面に通達結果が貼り付けられて届きます。
そのため、宛名側には自分の住所と氏名(または職場や移転先)を記載する必要があります。
- 郵便はがき(63円)1枚
収入印紙
申立金額分の収入印紙を1枚目の右上に貼ります(印紙代は裁判所に確認するといいでしょう)。
収入印紙を貼付することで、手数料の納付とされます。手数料の早見表はこちら。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで購入できます。
200円の収入印紙は、5万から100万円までの領収証によく使われるため、コンビニでの取り扱いがあります。
使用する収入印紙の金額が大きい場合は、最寄りの大きな郵便局をおすすめします。
- コンビニor郵便局で申立手数料に必要な収入印紙を買う
- 収入印紙を1枚目の支払督促申立書の右上に貼る
120円分の郵便切手を貼った無地の封筒
A4判の紙が折らずに入る角形2号の封筒に自分(債権者)の住所・氏名(法人の場合は法人名と代表者名。
送達場所や送達受取人の届出をしたときは、その届出場所を記載)を記載し、120円分の郵便切手を貼ります。
- 角形2号の封筒
- 120円分の郵便切手
- 宛名に自分の住所と氏名を記載する
1125円の郵便切手を貼った無地の封筒
こちらも債務者1名につき1枚ずつ必要です。
A4判の紙が折らずに入る無地の角形2号の封筒に、相手方(債務者)の住所・氏名(法人の場合は法人名と代表者名)を記載し、1,125円分の郵便切手を貼ります。
- 角形2号の封筒
- 1,125円の郵便切手
- 宛名に相手方(債務者)の住所・氏名を記載する
送付方法
これらをセットにして郵送で、管轄の支払督促係宛に送ります。その後、書記官に内容を審議されます。質問項目がある場合は、直接連絡がきます。
このとき、各ページの上部余白に捨印を押印しておくと、電話のやりとりだけで訂正が可能です。内容に追加、修正があれば書記官の方で手直しをしてくれ、審査が通過すると支払督促発付通知が届きます。
これで支払督促の申立てが受理されました。その後、2週間ほど相手からの連絡を待ち、異議申し立てもなく、支払いもない場合は「仮執行宣言の申立て」に移行します。
「仮執行宣言の申立書」は、支払督促発付通知とともに自宅に送付されます。「仮執行宣言の申立て」を申立てることで、強制執行の手続きに移行します。
督促手続オンラインシステムを活用
東京簡易裁判所では、インターネットからの申立ても受け付けています。督促手続オンラインシステムのサイトはこちら。
相手側に送付される支払督促の流れ
支払督促の審議が通過すると、相手側に簡易裁判所から「特別送達」という特別な郵便で「支払督促」が送付されます。原則、郵便職員から直接手渡されます。
受け取りが確認できると、申立人(自分)にも結果通知が届きます。支払督促の書類には、内容に不服があれば裁判所に異議申立てができるという説明、異議申立ての方法、「異議申立書」などが同封されています。
相手側には、支払うか異議を申し立てる選択期間が2週間与えられます。
内容に不服があり異議申立てを行った場合は、訴訟へと移行します。
その場合、支払督促は無効となり、こちらも弁護士を立てて裁判に挑まなければいけません。
まとめ
通常、支払督促の申立てが受理されると、慌てて支払ってくるというクライアントも少なくありません。
しかし、実際に支払うお金がないというクライアントもいます。
そんな場合「仮執行宣言の申立書」を申立て、債権執行することで相手の資産を差し押さえることができます。
資産を差し押さえられるような経験をされる人はあまりいないので、かなりのプレッシャーを与えることができるはず。
準備は大変ですが、弁護士に依頼しなくても自分でできるのが支払督促です。
必ず、未払いを回収するという強い決意を持って進みましょう!
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